伝染性膿痂疹(とびひ)
- 2019年2月12日
- 一般皮膚科
伝染性膿痂疹(とびひ)
とびひ(伝染性膿痂疹)は細菌による皮膚の感染症です。ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌(溶連菌と略します)などが原因菌です。接触によってうつって、火事の飛び火のようにあ広がるいことから“とびひ”と言われます。あせも・虫刺され・湿疹などをひっかいたり、転んでできた傷に感染を起してとびひになります。アトピ-性皮膚炎では皮膚のバリア機能が低下していて伝染性膿痂疹(とびひ)が合併しやすくなります。
伝染性膿痂疹(とびひ)の種類
伝染性膿痂疹(とびひ)はおおきく水疱性膿疱疹と痂皮性膿疱疹に分類されます。
1)水疱性膿疱
黄色ブドウ球菌の感染によるものです。0~6歳までの乳幼児に多く夏におこります。虫刺されや湿疹部などに感染がおこると、大小さまざまな水疱(すいほう)ができ、淡い紅斑を伴います。水疱はかんたんに破れてびらんとなり、辺縁を縁取るように拡大していきます。また、最初の水疱から遠く離れたところにも、あらたな病変が生じてどんどん増えていきます。湿疹に合併していると強いかゆみがあります。
2)痂皮性膿疱疹
主にA群β溶血性レンサ球菌(化膿レンサ球菌)によっておこります。年齢や季節に関係なく発症します。
最初は顔面や手などで局所の小水疱や膿疱として始まり、次に小水疱や膿疱から漏れ出た滲出液(じくじくした液)が厚い黄色痂皮(かひ)(かさぶた)へと変わっていきます。その後局所に多発したり、からだ全身に広がっていきます。炎症の症状が強く、発熱・のどの痛み・リンパ節の腫脹などの全身症状を伴います。
治療がうまくいっていないアトピー性皮膚炎のお子様におこりやすいです。
※MRSAによる伝染性膿痂疹(とびひ)
治療しても伝染性膿痂疹(とびひ)が治らない、または悪化している場合はMRSA(Methicillin‐Resistant Staphylococcus Aureus:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が原因菌となっていることが考えられます。MRSAとは、黄色ブドウ球菌の中で抗生物質に耐性を持つ(薬が効かないもしくは効きにくくなる状態)菌です。
皮膚科では、初診時にMRSAによる伝染性膿痂疹(とびひ)も念頭にいれて細菌培養検査をおこなうことにしています。
伝染性膿痂疹(とびひ)の治療
一般には抗菌薬の内服をおこないますが、範囲が限局性であれば塗り薬のみでも効くことがあります。
1)外用療法
とびひの部位を洗い流すことはとても大切です。細菌を含んだ滲出液(じくじくした液)や痂皮(かさぶた)を物理的に洗い流すことになるからです。石けん・ボディーソープを使って患部をやさしく洗い、シャワー浴や掛け湯などで十分にすすぎます。消毒液は使いません。
ステロイド外用剤単独で治療すると、伝染性膿痂疹(とびひ)はむしろ悪化することがおおくて危険です。
2)内服療法
水疱性膿疱疹では、セフェム系、ペニシリン系、あるいはニューマクロライド系抗菌剤を内服します。状態をみながら4~5日間の内服します。
痂皮性膿疱疹膿疱疹ではペニシリン系薬を第一選択としますが、黄色ブドウ球菌にも感受性のある抗菌薬を選びます。 治療開始後3日経っても軽快しなければ、MRSA感染を考慮して細菌培養を行い、抗菌剤の効き具合を予想してから変更します。