円形脱毛症
- 2024年2月11日
- 一般皮膚科
円形脱毛症
髪の毛が円形に抜けてしまう病気です。頭髪だけでなく、眉毛、ひげ、体毛など広範囲に及ぶこともあります。
<原因>
はっきりとした原因はわかっていませんが、自己免疫性疾患といって、脱毛部で自身の免疫機能が異常な働きをしていると考えられています。遺伝子的な素因を持つ人に疲労や感染症などの肉体的負荷、精神的ストレスなどが引き金となって発症するとされていますが、明らかな誘引がないことも多いです。昔からストレスとの関連が言われていますが、精神的なストレスは原因というよりもきっかけの一つとなりうるもので、円形脱毛症=精神的ストレスという従来の考え方は見直されています。
血縁者に発症者がいる場合の発症リスクが上がること、アトピー性皮膚炎の人ほどなりやすいことが報告されています。橋本病などの甲状腺疾患、尋常性白斑、SLE、関節リウマチ、Ⅰ型糖尿病、重症筋無力症などの自己免疫性疾患が合併しやすいことも言われています。
<分類>
(1)通常型
単発型:小型の脱毛斑が1個のみのもの。多くは放置しておいても自然に治癒します。
多発型:複数の脱毛斑を認めるもの。
(2)全頭型:脱毛が頭部全体に拡大したもの。
(3)汎発型:脱毛が全頭以外に眉毛、まつ毛など全身に拡大したもの。
(4)蛇行型:頭髪の生え際が帯状に脱毛するもの。
<治療>
(1)外用治療
①ステロイド外用薬
最も一般的に使用される治療法です。局所の自己免疫反応と炎症を抑える効果があります。脱毛が広範囲の場合にはその他の治療法との併用が良いようです。
②カルプロニウム塩化物(フロジン液)
脱毛部の血流を良くする塗り薬です。有益性は十分に実証されていませんが、保険適応があり過去の診療実績による安全性から使用されることが多く、併用療法の一つとして使用されます。
(2)ステロイド局所注射
脱毛部にステロイドの局所注射を4〜6週に1回行います。効果は高いですが、注射による痛みを伴うのが難点で、あまり広範囲のものには向きません。副作用として注射部位がへこんだり血管拡張が報告されています。
(3)局所免疫療法
SADBE、DPCPといった化学物質を脱毛部位に外用し、アレルギー性皮膚炎(かぶれ)を繰り返し起こすことで免疫バランスを変化させて円形脱毛を改善することをねらったものです。
保険適応とはなっておらず、当院では行なっておりません。
(4)紫外線治療
紫外線を患部に照射することで円形脱毛症の原因となる毛包周囲のリンパ球を制御します。週に1〜2回の照射が必要です。
(5)冷却療法
液体窒素による治療です。有用性は現段階では十分に実証されていませんが、簡便で副作用も軽微な点などから併用療法の一つとして行うことがあります。
(6)内服療法
①抗ヒスタミン薬内服
併用療法の一つとして使用することがあります。アトピー 素因がある場合には効果が出やすいとされています。
②セファランチン、グリチロン内服
保険適応があることと過去の診療実績による安全性から、併用療法の一つとして使用することがあります。
③JAK阻害薬内服
最近円形脱毛症に対しての適応が承認された新薬です。ステロイド内服や点滴ほどの副作用がなく、長期に使用できるのが特徴です。頭部全体の50%以上の脱毛をきたしている場合が適応となります。
定期的に血液検査、感染症検査、胸部X線検査等が必要です。
オルミエント(バリシチニブ):適応年齢は15歳以上
リットフーロ(リトレシチニブ):適応年齢は12歳以上
(7)ステロイド全身投与
急速に進行する脱毛症においては通常の治療では進行を抑えることが難しいので、ステロイドの全身投与(内服、点滴)を行う場合があります。副作用として糖尿病、高血圧、高脂血症、胃潰瘍、骨粗しょう症、緑内障などがあるため、定期的に検査をして副作用がないことを確認しながら使用する必要があります。点滴でステロイドを投与する場合には入院が必要となります。
症状 |
推奨される治療 |
単発型 少数の多発型 |
ステロイド外用薬 ステロイド局所注射 紫外線療法 |
広範囲の多発型 |
ステロイド外用薬 局所免疫療法 紫外線療法 50%を超える場合はJAK阻害薬 |
全頭型 |
局所免疫療法 50%を超える場合はJAK阻害薬 |
蛇行型 |
局所免疫療法 ステロイド局所注射 50%を超える場合はJAK阻害薬 |
急速進行する重症例 |
ステロイド内服 ステロイド点滴 |
一般皮膚科診療内容
- 帯状疱疹
- アトピー性皮膚炎
- 掌蹠膿疱症
- 脇汗、多汗症
- じんましん(蕁麻疹)
- 白癬(水虫、タムシ)
- 白斑(尋常性白斑)
- 伝染性膿痂疹(とびひ)
- 伝染性軟属腫(みずいぼ)
- 乾癬
- 女性特有のお肌の悩み
- 円形脱毛症
- エキシマライト