乾癬
- 2019年2月12日
- 一般皮膚科
乾癬
皮膚が赤く盛り上がり、その表面を覆う銀白色の細かいかさぶたがフケのようにボロボロと剥がれ落ちる皮疹が多発する病気です。
ゆみの程度は個人差がありますが、乾癬患者さんの約5割でかゆみがみられ、時に強いかゆみを生じる場合もあります。また、2~4割の患者さんで爪の病変がみられます
乾癬の患部では、皮膚の表面に角質が積み重なり、皮膚が厚くなっています。これは、皮膚のターンオーバーつまり新陳代謝が異常に活発になり、通常の約10倍の速さで皮膚がつくられるためです。なぜこのようなことが起きるのか、そのしくみはまだ完全には解明されていませんが、最近の研究により免疫機能の異常が関与していることが分かってきました。免疫に異常をきたしやすい体質の人に、環境ストレスなどの刺激が加わることで乾癬を発症すると考えられています。
乾癬の種類
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
乾癬の約90%を占めます。
頭部、肘、膝など、こすれやすい部分や刺激を受けやすい部分によく見られ、全身の広がることがあります。
滴状乾癬(てきじょうかんせん)
小さな水滴程度の大きさの皮疹が全身に出現します。
鼻、のど、歯など身体のどこかに細菌の感染病巣が存在し、それが悪化する時に起こることがあります。とくに扁桃腺炎がきっかけになることが多いです。
乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)
尋常性乾癬が全身の広がり、皮膚全体が赤みを帯びます。発熱など全身症状がある場合もあります。
紅皮症の誘因は皮膚炎、感染症、薬剤などいくつかあります。
発症率は乾癬患者さん全体の約1%9)で、乾癬の治療が不十分だった場合や科学的根拠のない治療を行った場合、もしくは治療を行わなかった場合などに発症することがあります。
膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)
発熱、倦怠感を伴い、急激に全身の皮膚が紅くなり、膿疱が多発します。
放置すると、全身衰弱などにより重篤な状態になることがあります。
乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)
関節症性乾癬(かんせつしょうせいかんせん)とも呼ばれます。
乾癬患者さんの中には、手足の関節や、首から背骨、アキレス腱、足の裏などに痛みや、腫れ、こわばりを訴える方もいます。このように、乾癬によって関節に炎症が起こった状態を乾癬性関節炎といい、乾癬患者さんの約15%に合併するといわれています。症状は関節リウマチに似ていますが、異なる病気です。爪に症状がある方が多いです。乾癬性関節炎の多くは関節に症状が出る前、または出ると同時に乾癬の皮膚症状が現れます。しかし、皮膚症状が遅れて現れることもあリます。
関節症性乾癬は治療せずに、放置しておくと関節が変形するなどの障害をきたすので、早めに診断して治療することが大切です。
*治療*
*ステロイド外用剤
ステロイドは効果発現が早いのですが、長期にわたって外用すると皮膚がうすくなったりするため、いったんよくなったら活性型ビタミンD3(VD3)へ移行します。
*活性型ビタミンD3(VD3)外用剤
活性型ビタミンD3(VD3)は効果発現は遅いのですが、長期外用により副作用が少ないので、ステロイドを外用していったんよくなってからの寛解維持期の治療に向いています。
ステロイドと活性型ビタミンD3(VD3)の配合外用剤
1日1回の塗布でステロイドと活性型ビタミンD3(VD3)の双方を外用する手間がはぶけます。症状が強い時期から使うことができ、よくなってからの寛解維持期には活性型ビタミンD3(VD3)単剤に変更します。
コムクロシャンプー
乾癬の皮疹が頭皮にあると大量のフケがでます。
これまでは頭皮の乾癬に対してステロイド含有ローションやクリーム、活性型ビタミンD3(VD3)含有ローションで治療をおこなっていましたが、べたつきが不快だったり、広い範囲に外用するのがたいへんでした。クロベタゾールプロピオン酸エステルを含んだコムクロシャンプーによる治療が便利です。
使用法は1日1回、乾燥した頭部に患部を中心に適量を塗布し、約15分後に水又は湯で泡立て、洗い流します。
光線療法
乾癬治療には紫外線(UV)の照射が効果があり、長い間使われてきました。
紫外線の中でも中波長紫外線(UVB, 波長域290-315nm)は乾癬に特に効果がありますが、日焼けするなどの問題点があります。
波長308~311nm付近の光を照射する従来のナローバンド治療器とは異なり、より効果の高いと考えられる308nm付近の紫外線に限局して照射します。
308nmを選択的に照射することで、従来の紫外線療法(PUVA、ナローバンドUVB)よりも少ない回数で改善効果を認めやすく、効果の持続も長いと言われています。
エキシマライト費用
項目 | 点数 | 自己負担額(30%) |
ナローバンドUVB/エキシマライト | 340点 | ¥1,020 |
※「皮膚科光線治療」の中波紫外線療法(308ナノメートル以上313ナノメートル以下に限定したもの)に相当します。
※保険適応は1か月に8回までとなります。
照射時間は通常1~2分、長くて数分です。
勤務日時の関係で大学病院の診療日、診療時間に受診ができない方、長い待ち時間がいやな方は、当院でのエキシマライト治療をぜひご検討ください。
*内服療法
オテズラ錠
ステロイド外用剤を中心とする局所療法等で効果が十分に得られず、皮膚の乾癬症状が体全体の10%以上を占める方、関節の痛み、変形を伴う関節症性乾癬の方が使用できます。これまでは治療が難しかった、頭皮、爪の乾癬にも効果があります。
1日2回の内服で初回の2週間は徐々に薬の量を上げていき、2週間 目から量を固定します。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性、小児は使用できません。
オテズラ錠薬価(1月あたり)
最初の1か月
49,602点 保険診療の場合の自己負担額:
14,881円(自己負担30%)
2か月目以降
54,465点 保険診療の場合の自己負担額:
16,340円(自己負担30%)
シクロスポリン(ネオラール)※
乾癬の発症や悪化の原因の1つに免疫作用の過剰な働きがあげられます。シクロスポリンは過剰な免疫作用を抑えるお薬です。
主な副作用として血圧上昇、多毛、腎機能障害などが報告されており、定期的な血圧測定と血液検査が必要です。
レチノイド(チガソン)※
ビタミンAの誘導体で、表皮の過剰な増殖を抑えます。
胎児に影響を与えるおそれがあるため、服用中だけでなく服用中止後も、男性は6ヵ月、女性は2年の避妊が必要です。
メトトレキセート(リウマトレックス)※
乾癬には保険適応外であるが、難治性乾癬、特に関節症性乾癬に用いられます。
長期使用では肝機能障害が問題になります。1%の方には開始初期に重篤な骨髄障害を起こしたり、間質性肺炎を起こす可能性があります。
注射薬
生物的製剤※
免疫に関わる物質の働きを弱めて乾癖の症状を抑えるお薬です。(薬価が高額になります。)内服薬もございます。
生物学的製剤による治療は、これまでの治療で効果が見られない患者さんが主な対象となります。生物学的製剤による治療を行うと免疫が抑えられるため、感染症にかかりやすくなる可能性があります。
開始前には全身状態の精査を必要です。内科のある総合病院にご紹介いたします。
すでに生物製剤で加療中の方は、状況により当院でも引き続きの投薬が可能です。ご相談ください。